Author Topic: BircwlhXengvzwya  (Read 53 times)

Unaccendy

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BircwlhXengvzwya
« on: October 16, 2013, 05:44:52 am »
 小松はまた、天吾に細かい文筆の仕事をまわしてくれた。小松の出版社が出している女性誌のための無署名の原稿書きだった。投書のリライトから、映画や新刊書の簡単な紹介記事から、果ては星占いまで、依頼があればなんでもこなした。天吾が思いつきで書く星占いはよくあたるので評判になった。彼が「早朝の地震に気をつけて下さい」と書くと、実際にある日の早朝に大きな地震が起こった。そのような賃仕事は、臨時収入としてありがたかったし、また文章を書く練習にもなった。自分の書いた文章が、たとえどのようなかたちであれ、活字になって書店に並ぶのは嬉しいものだ。  「落ち着いて。おれの顔を見ろ。見覚えがあるだろう」
 それでも黙りこくっている。  「あなた」向きを変え、男を正面から見据えた。「どうして、わたしのことを知ってるんですか」
 それぞれが怪我を負った箇所を押えながら、三人でその場を離れた。  「女が王宮にあがった歴史的偉業になるんじゃない?」
「私は決して薩摩の圧力には屈しません」   小松は天吾より十六歳年上で、四十五歳になる。文芸誌の編集一筋でやってきて、業界ではやり手としてそれなりに名を知られているが、その私生活について知る人はいない。仕事上のつきあいはあっても、誰とも個人的な話をしないからだ。彼がどこで生まれてどこで育ち、今どこに住んでいるのか、天吾は何ひとつ知らなかった。長く話をしても、そんな話題は一切出てこない。そこまでとっつきが悪く、つきあいらしきこともせず、文壇を軽侮するような言動を取り、それでよく原稿がとれるものだと人は首をひねるのだが、本人はさして苦労もなさそうに、必要に応じて有名作家の原稿を集めてきた。彼のおかげで雑誌の体裁がなんとか整うということも何度かあった。だから人に好かれはせずとも、一目は置かれる。
「真美那さんお呼びでしょうか?」   立ちあがると、あらためて目眩《めまい》がした。
「そうよ。あの子、自分のしあわせより人のしあわせを願うタイプだから。ましてや薫君のこととなれば……」母が鍋の火を止めた。「さあ、具ができたから混ぜるわよ」  「そこまでは……」

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